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本記事の成分情報は、各メーカー公式情報・製品パッケージ表示および公的機関の公開資料をもとに整理したものです。医療的な助言を提供するものではありません。肌トラブルが続く場合は皮膚科専門医にご相談ください。
リード
成分表示を見ていると、ほぼ同じに見えるけれど、よく見ると微妙に違う2つの名前。それが「ラウリル硫酸Na」と「ラウレス硫酸Na」です。
- ラウリル硫酸Na(Sodium Lauryl Sulfate=SLS)
- ラウレス硫酸Na(Sodium Laureth Sulfate=SLES)
たった「ス」が入るかどうかの違いに見えますが、化学構造・皮膚刺激性・製造上のリスク・含まれる製品の傾向まで、すべて異なります。「両方とも危険」と一括りにされていたり、逆に「どっちでも同じ」と扱われていたりと、ネット上の情報は混乱しがちです。
本記事では、ラウリル硫酸Naとラウレス硫酸Naの違いを、化学構造・刺激性・副生物リスク・代表的な製品の4つの観点で整理します。「結局どっちを選べばいいの?」という疑問にも、判断の指針をお伝えします。
目次
- まず結論:3行でわかる違い
- 化学構造の違い
- 皮膚刺激性の違い
- 1,4-ジオキサン副生問題の違い
- 代表的な製品と登場頻度
- 結局どっちを選べばいいのか(判断フローチャート)
- どちらも避けたい人への代替成分
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
1. まず結論:3行でわかる違い
- 皮膚刺激性:ラウリル硫酸Na(SLS)のほうが高い傾向にあると報告されている
- 1,4-ジオキサン副生問題:ラウレス硫酸Na(SLES)に固有のリスク(精製工程で大幅低減される)
- どちらも避けたい人:アミノ酸系・ベタイン系の界面活性剤を含む製品を選ぶ
詳しく見ていきましょう。
2. 化学構造の違い
ラウリル硫酸Na(SLS)
ラウリルアルコール(炭素数12のアルコール)に直接、硫酸基を結合させ、ナトリウム塩としたシンプルな構造です。
ラウリルアルコール ─ 硫酸 ─ Na
ラウレス硫酸Na(SLES)
ラウリルアルコールと硫酸基の間に、ポリエチレングリコール(PEG)の鎖を挟む構造です。PEGの鎖の長さは通常2〜4個(モル数)です。
ラウリルアルコール ─ PEG鎖(2〜4個)─ 硫酸 ─ Na
この構造の違いが何を生むか
PEG鎖が挟まることで、SLESはSLSと比べて以下の特徴を持ちます。
- 親水性がやや高くなり、肌へのなじみが穏やかになる
- 皮膚刺激性が低くなる傾向がある
- 一方で、製造工程でPEG由来の副生物(1,4-ジオキサン)が生じうる
つまり、構造のひと工夫で「刺激性を下げた代わりに、別のリスクが生まれた」というのが、この2成分の関係です。
| 項目 | ラウリル硫酸Na(SLS) | ラウレス硫酸Na(SLES) |
|---|---|---|
| INCI名 | Sodium Lauryl Sulfate | Sodium Laureth Sulfate |
| 略称 | SLS | SLES |
| PEG鎖 | なし | あり(2〜4モル) |
| 親水性 | 中程度 | やや高い |
| 起源 | ラウリルアルコール | ラウリルアルコール+エチレンオキシド付加 |
3. 皮膚刺激性の違い
複数の皮膚科学研究で、ラウリル硫酸Na(SLS)はラウレス硫酸Na(SLES)より皮膚刺激性が高い傾向にあると報告されています(参考:Contact Dermatitis、Journal of the American College of Toxicology など)。
観察されている内容
- パッチテスト陽性反応の出現率はSLSのほうが高い傾向
- 経表皮水分蒸散量(TEWL)の上昇はSLSのほうが顕著
- 高濃度・長時間接触でも、SLESのほうが影響が穏やかな傾向
ただし「SLES=完全に安全」ではない
SLESも界面活性剤である以上、皮膚バリアへの影響はゼロではありません。「SLSよりはマシ」というのが正しい理解で、敏感肌・アトピー性皮膚炎の方ではSLESでも反応が出る可能性があります。
研究で使われる「基準成分」
ラウリル硫酸Naは、皮膚刺激性試験で「陽性対照(=刺激を起こす基準成分)」として使われることがあります。「これより刺激が強い・弱い」を測るための物差し的な位置づけです。SLESはこの物差しよりは穏やかな位置にある、と捉えると分かりやすいかもしれません。
4. 1,4-ジオキサン副生問題の違い
SLSにはなく、SLESに固有のリスクとして挙げられるのが、1,4-ジオキサン(1,4-Dioxane)という副生成物の問題です。
1,4-ジオキサンとは
SLESの製造工程で、エチレンオキシドを付加する反応の副産物として微量に生じることが知られている化学物質です。国際がん研究機関(IARC)により、グループ2B(ヒトに対する発がん性が疑われる)に分類されています(参考:IARC Monographs Volume 71)。
化粧品中の残留量
化粧品原料メーカーの多くは、製造後に1,4-ジオキサンを除去する精製工程(ストリッピング処理)を行っており、最終製品中の残留量は微量です。米国FDAは「化粧品中の残留1,4-ジオキサンは、現時点で消費者に対して有害なリスクをもたらすレベルではない」との見解を示しています(参考:U.S. FDA “1,4-Dioxane in Cosmetics”)。
注意すべき論点
- 精製工程の品質は原料メーカーやコスト水準によってばらつきがあると指摘されている
- 規制の厳しい国(米カリフォルニア州など)では、化粧品中の1,4-ジオキサン濃度に上限値が設けられている
- 日本では化粧品中の1,4-ジオキサンに関する明示的な上限規制は現在ない
SLSにはこの問題はない
SLSはPEG鎖を持たないため、1,4-ジオキサンの副生は起こりません。「皮膚刺激性は高いが、1,4-ジオキサンリスクはない」のがSLS、「皮膚刺激性は穏やかだが、1,4-ジオキサンリスクがある」のがSLES、という構図になります。
5. 代表的な製品と登場頻度
| カテゴリ | SLSの登場 | SLESの登場 |
|---|---|---|
| マスカラ | 5/5(100%) | 0/5 |
| 洗顔料 | 3/5(60%) | 1/5(20%) |
| シャンプー | 2/5(40%) | 3/5(60%) |
| ボディソープ | 2/5(40%) | 2/5(40%) |
| 歯磨き粉 | 多い | 一部 |
| スキンケア | ほぼなし | ほぼなし |
興味深い傾向:シャンプーではSLESのほうが多く採用されている点です。「肌よりは頭皮、洗い流す時間が短く、起泡力が重視される」場面では、刺激性の穏やかなSLESが選ばれやすい、ということが見て取れます。
関連記事:ラウリル硫酸Naの危険性とは? / シャンプーの界面活性剤解説
6. 結局どっちを選べばいいのか
ケースA:肌が健康で、特にトラブルがない方
どちらでも、現行の化粧品基準のもとで使用される範囲では問題が報告されていません。日常的な選択肢として、価格や使用感で選んで差し支えない範囲と考えられます。
ケースB:敏感肌・乾燥肌の方
SLSは避けたほうが無難と考えられます。SLESもゼロリスクではないため、できればアミノ酸系(ココイルグルタミン酸Na、ココイルメチルタウリンNaなど)を選ぶことをおすすめします。
ケースC:アトピー性皮膚炎・酒さ・接触皮膚炎の方
両方とも避けたほうが望ましいと考えられます。皮膚バリアがもともと低下している状態では、より刺激の少ない処方を選ぶ価値が大きいです。皮膚科の先生にもご相談ください。
ケースD:1,4-ジオキサンが特に気になる方
SLES(ラウレス硫酸Na)は避ける選択になります。SLSは1,4-ジオキサンの副生がないため、こちらに切り替えるか、PEG系を一切含まない処方を選ぶことになります。
ケースE:口内炎ができやすい方
SLSを含む歯磨き粉は避けるという選択肢が報告されています。SLS不使用の歯磨き粉を試す価値があります。
7. どちらも避けたい人への代替成分
| 代替成分 | 系統 | 特徴 |
|---|---|---|
| ココイルグルタミン酸Na | アミノ酸系 | グルタミン酸由来、低刺激と言われる代表格 |
| ココイルメチルタウリンNa | アミノ酸系 | しっとりした洗い上がり |
| ラウロイルメチルアラニンNa | アミノ酸系 | さっぱり系のアミノ酸系 |
| コカミドプロピルベタイン | ベタイン系 | ベビーシャンプーに多い |
| 石けん(脂肪酸Na、脂肪酸K) | 石けん系 | アルカリ性に注意(保湿は別途必要) |
ただし、これらも「絶対安全」ではありません。たとえばコカミドプロピルベタインはアレルギー報告のある成分です。新しい製品はパッチテストを行うことをおすすめします。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. ラウリル硫酸Na(SLS)は発がん性がありますか?
いいえ。SLSそのものは発がん性を示す科学的根拠はなく、国際がん研究機関(IARC)にも発がん物質として分類されていません。「危険」というイメージはインターネット上の誤情報に由来することが多く、適切な濃度・使用法であれば安全性に問題はないと評価されています。
Q2. SLESの1,4-ジオキサンは本当に危険ですか?
1,4-ジオキサンはIARCのグループ2B(ヒトへの発がん性が疑われる)に分類されていますが、化粧品中の残留量は通常きわめて微量です。米国FDAは現時点での消費者リスクは低いとしており、多くのメーカーが精製工程(ストリッピング)で除去しています。ただし、気になる方はSLESを避けるか、PEG系成分を含まない製品を選ぶと安心です。
Q3. 敏感肌ですが、どちらを避けるべきですか?
敏感肌や乾燥肌の方は、まずSLS(ラウリル硫酸Na)を含む製品を避けることをおすすめします。SLESも完全にリスクがないわけではないため、できればアミノ酸系(ココイルグルタミン酸Naなど)やベタイン系の界面活性剤を使用した製品を選ぶとより安心です。
Q4. SLSとSLESはどちらが泡立ちがいいですか?
一般的にSLS(ラウリル硫酸Na)のほうが起泡力が高い傾向があります。SLESはPEG鎖により親水性が高まり、泡立ちはやや穏やかですが、増粘剤(コカミドDEAなど)との組み合わせで豊かな泡立ちが得られるため、シャンプーや洗顔料に広く使われています。
Q5. 成分表示で「ラウリル硫酸Na」と「ラウレス硫酸Na」を見分けるには?
成分表示(日本語)では「ラウリル硫酸Na」がSLS、「ラウレス硫酸Na」がSLESです。英語表記ではSLS=”Sodium Lauryl Sulfate”、SLES=”Sodium Laureth Sulfate”と表記されます。「ラウレス」に「ス」が入っているほうがSLESとして覚えると区別しやすいでしょう。
Q6. 子どものシャンプーや洗顔料にも含まれていますか?
子ども向け製品にはSLESよりも刺激の少ないコカミドプロピルベタイン(ベタイン系)を主成分としたものが多く、SLSはほとんど使用されません。ただしSLESが含まれる場合もあるため、成分表示を確認し、アミノ酸系・ベタイン系の製品を選ぶとより安心です。
9. まとめ
本記事では、ラウリル硫酸Na(SLS)とラウレス硫酸Na(SLES)の違いを、化学構造・皮膚刺激性・1,4-ジオキサン副生問題・代表製品の4つの観点から解説しました。
2成分の最大の違いは「PEG鎖の有無」にあります。SLSはシンプルな構造で皮膚刺激性が高い一方、1,4-ジオキサンのリスクはありません。SLESはPEG鎖により刺激が穏やかになりましたが、製造工程で1,4-ジオキサンが副生する可能性を持ちます。
どちらを選ぶかは「肌の状態」と「何を優先するか」によって変わります。肌トラブルのない健康な肌であれば、どちらも現行基準の範囲内で大きな問題はありません。敏感肌・アトピー肌の方はSLSを避け、1,4-ジオキサンが気になる方はSLESを避けるのが賢明です。いずれも気になる場合は、アミノ酸系・ベタイン系の界面活性剤を含む製品への切り替えをご検討ください。
成分表示を正しく読み解く力を持つことが、自分の肌に合ったスキンケア選びの第一歩です。ぜひ本記事を参考に、製品選びに役立ててください。

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